河合名駅.com - 浪人すべき理由と浪人すべきでない理由

浪人すべき理由と浪人すべきでない理由

東大の二次試験が終わってから合格発表までの間にこのウェブサイト「河合塾名駅校での1年間の浪人記録」(通称:河合名駅.com)を立ち上げてから,6年が経過しました。 公開してから2,3年は毎年反響がありましたが,6年も経つと情報も古くなっており,あるいは現役志向に拍車がかかっているのか,見向きもされなくなり,時の流れを感じています。 浪人生の役に立つような情報を更新することは不可能であり,当サイトは役目を終えたとも言えるかもしれませんが,この手の記録というのは残しておいて損はないものです。 なんでも記録として取っておこうという姿勢が,そもそもこのサイトの中身に反映されているのです。

さて,私も東大に入って6年が経ち,今春には博士課程へ進学します。 もはや浪人時代を振り返ることはないのですが,塾で5年ほどアルバイトしており,浪人するかしないかの相談を受けたり,あとちょっとだったのだから浪人すればいいのにと感じたりしています。 そもそも私自身,浪人に対しては肯定的になったり否定的になったりしてきました。それは,当事者意識の揺れによるものです。しかし,こうして時間をおいてみると,ある程度納得のいく説明ができなくもないなと感じて,6周年記念としてキーボードを叩くことにしました。

現役高校生の時は,絶対に浪人は嫌だと考えていました。理由を挙げるまでもないでしょう。1年という時間はあまりにも貴重だったからです。しかしその一方で,十分に滑り止めも受けませんでしたから,半ば自分の意思で浪人することになったのです。 入試の直後はこのサイトにも書いてある通り,浪人には否定的です。合格後も,とてもあんな体験をすべきではないと考えていました。 ただ,入学後は少し違います。私にとって浪人の1年間は大変価値のあるものでした。何より勉強できたし,多くの思索もしました。おかげで東大に入ってから何かを迷うということがほとんど無かったのも事実です。 こうした観点から,忙しい高校生にはできなかった思索をこなしているだけ格が違うなどと考え,1年くらい浪人を経験するべきですらあると結論づけていた時期があります。 しかしこれは誤りでした。浪人しているかどうかは関係ありません。つまらない人は現役だろうが浪人だろうがつまらないままです。

では,まず今考えている浪人すべき理由について述べます。 まずは,浪人せざるを得ない場合です。例えば,私立の理系学部に通うと莫大な学費がかかりますから,1年予備校に通っても国立に行ければ簡単にペイします。私が浪人した理由はこの1点に集約されます。私立を受けなかったのは高くて通えなかったからです。 次に,予備校できちんと高校範囲を学習すべきである場合です。たいていの場合,高校の授業はポンコツです。私の学校の授業も大概ポンコツで,英語は最悪と言って良いでしょう。化学はいくぶんかマシでした。 ただ,これを高校の教員の責めに帰すのは無理があります。決められたカリキュラム,人事異動がある,中高一貫校とは異なり3年しかない等です。 教育環境や情報が非常に整っている東京都内ならまだしも,愛知の片田舎の進学校でできることはほぼ皆無です。予備校の授業を受けてみる価値はあります。

次に,浪人すべきでない理由について述べます。 これは簡単です。いったい,君はいつまで,高校の科目の範囲ばかりの勉強をするつもりなんだ?ということです。 高校生は視野狭窄です。中学生よりマシだと思っている時点で終わっています。世界には日本語と英語しかないと思っています。フランス語やドイツ語があるのは知っていますが,英語みたいなものだと考えています。数百年前の物理や数学を面白がって物理学科や数学科に行きたいなどと言い出します。 大学はとんでもなく視野を広げてくれる場所です。だいたい,どんなに受験勉強を頑張ったところで,言語学,科学哲学,心理学,ロシア文学,タミル語,マクロ経済学,憲法学,線形代数学,数理統計学,素粒子論,機械工学,コンピュータ科学,医学の入り口を垣間見ることすらほとんど叶いません。 受験科目に絞ったってそうです。有機化学にはフェーリング反応と銀鏡反応しかないと思いますか?ベクトルは「向きと大きさを持つなにか」なんですか?いったいいつまで150 wordsの自由英作文の練習をしているんですか?この前8000語の修士論文を書いたところです。150 wordsなんて主張すら書き切れません。

大学での勉強はとても面白いものです。こんな分野があったのか,という発見の連続でしょう。5教科7科目になかった分野こそ,あなたが最も得意とすることかもしれません。あるいは,大学で学んだ後振り返ると,受験生の時につまずいていたことが一瞬で理解できることもあります。木を見て森を見ずとはよく言ったものです。 繰り返しますが,受験生は視野狭窄なのです。自分は医者になるしかないなどと思い込んでいます。馬鹿馬鹿しい話です。コンピュータ科学に興味はありませんか?ありませんよね。見たことのないものには興味は持てません。

まとめます。個人の嗜好によって,1浪はしても良いと思っています。これは見方が変わるからです。もちろん,浪人しないでさっさと大学で学問に打ち込むのは賛成です。そして,2浪以上は無意味です。大学で他の勉強をした方がよっぽど価値を創出します。 自分には○○しかない,と思った時点で視野狭窄です。直ちに大学進学すべきです。

平成30年3月2日

Copyright © 2018 NIPO
このページは、私個人の独断と偏見によって制作されたものであり、客観的な視点によるものでも無ければ、その正確性も保障できません。予めご了承のうえご覧ください。